抄録
近年、自然環境問題に対する関心の高まりとともに、アニミズムが再び一部で注目されている。しかし、その現象を語るためのアニミズム「論」の再検討は不十分であり、本稿はそうした理論の整理を目的とする。アニミズム論は、タイラー以来、宗教の基礎理論とされてきたが、一部の論者はこれを環境認識の手法として捉えなおそうとしている。つまりアニミズム論とは、(自然)物に霊が宿ると「見立て」、「擬人化」する認識手法だというのである。しかしこの見方は、常に一方的に対象を認識する理性的能動的主体という至極近代的な人間観を前提としており、自己と(自然)物が等しく霊を共有し、その神秘的な力によって自らも生かされているという主体の受動的感覚を看過しやすくなる。人間が自然環境を一方的かつ操作的に扱ってきた近代的発想を批判したいのならば、この人間の受動性を再認識すべきであるというのが、本稿の主張である。
寄稿の翻訳タイトル | Ways of Talking about "Animism": A Review from the Standpoint of Passivity |
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本文言語 | 日本語 |
ページ(範囲) | 741-763 |
ページ数 | 23 |
ジャーナル | 宗教研究 |
巻 | 83 |
号 | 3 |
DOI | |
出版ステータス | 出版済み - 2009 |