Abstract
北海道演習林拓北流域及び福岡演習林御手洗水流域において,2005年6月-2006年6月にかけて降水,渓流水を採取・分析し,各流域における大気質や基岩等の立地環境の違いが降水や渓流水の化学成分に及ぼす影響について検討した。拓北流域では,降水,バルク降水,渓流水を採取し,御手洗水流域では,バルク降水,渓流水を採取した。拓北流域では,バルク降水のpH値が降水と比べて高かった。水素イオン以外のイオン成分濃度は,降水と比べてバルク降水で上昇しており,特にCa2+,NH4 +の上昇が顕著であった。このイオン成分濃度の上昇の原因は,無降雨期間におけるガス状,粒子状物質のロート上への乾性沈着によるものと思われた。pH上昇の原因として,乾性沈着によるアルカリ土類金属やアンモニアの溶解が考えられた。バルク降水のNH4 +濃度やNH4 +沈着量は御手洗水流域と比べて拓北流域で高く,NO3 -,SO4 2-沈着量は拓北流域と比べて御手洗水流域で高い結果となり,大気質による違いを反映していた。バルク降水のpHは,御手洗水流域で4.5,拓北流域で5.3であり,御手洗水流域において顕著に低かった。その原因として,御手洗水流域において大気汚染に由来するNO3 -,SO4 2-濃度が高まっていること,拓北流域ではバルク降水中のNH4 +,K+,Ca2+濃度が御手洗水流域よりも高いためと考えられた。渓流水のNO3 -,SO4 2-濃度は,拓北流域と比べて御手洗水流域において顕著に高い値を示した。その原因として,御手洗水流域においてNO3 -,SO4 2-沈着量が拓北流域と比べて高いためと考えられた。また,拓北流域では,K+濃度が高く,御手洗水流域では,pH及びMg2+濃度が顕著に高かった。この違いは基岩の違いが反映していると考えられた。御手洗水流域における渓流水のpHとMg2+濃度には有意な正の相関がみられた。
Translated title of the contribution | Chemical characteristics of precipitation and streamwater at the Ashoro Research Forest and Kasuya Research Forest |
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Original language | Japanese |
Pages (from-to) | 33-43 |
Number of pages | 11 |
Journal | Bulletin of the Kyusyu University Forests |
Issue number | 88 |
Publication status | Published - Mar 2007 |